LiveTechnical Report 2010 11 InterBEE Grassvalley

Report

2010.11.17 @幕張メッセ トムソン・カノープス株式会社 GrassValleyブース

今回のプロジェクトを終えて最もぴったりと心にはまる言葉があるとすれば、それは「成長」だ。

InterBEE GrassValleyブースでのプレゼンの様子

私が彼女と初めて出会った時の印象は、まさに「天真爛漫」だ。その笑顔が印象的な彼女は、今年の新卒採用として我が社に入社した。幸運か不運か彼女は最も厳しい技術部に配属されたのだった。映像テクニカルは体力的にも精神的にも厳しい仕事な為、彼女に務まるかは正直解らないところがあった。同期の新人が厳しさに絶えかね会社を去って行く中、彼女は持ち前の明るさと負けん気で残った。

「今回のメインオペレーションは彼女に任せようと思う」GrassValleyブースのテクニカル全権を預けたチーフスタッフからこの言葉を聞いた時に不思議と不安は無かった。「やらせてみよう」それが我々が出した答えだった。

GrassValley様(以下:GV)からInterBEEのテクニカル依頼を受けたのは3週間前の事だった。
今回のGVのブースは多くのチャレンジがあった。まずはメインステージで展開される世界初となる3Dスーパースローモーション。カポエラのライブをLDK8300というエミー賞受賞したカメラを使って3D撮影し、リアルタイムでスローモーションを生成し送出するというもの。しかもリア投影のプロジェクションで実現させる事。

InterBEE GrassValleyブースでのプレゼンの様子

ブースのフロントをハーフミラーで覆いその背面にマルチモニターを設置しHDMA-4000Syncで同期再生させる事。黒画面の時にはただのミラーに見えるが、映像が流れると鏡に映像が浮かび上がるという演出的にも新たな試みだった。これはブースデザインを手掛けたデザイン会社のデザイナーのアイデア勝ちだった。そして仕上げを丁寧に行ってくれた建装屋さんの技術の勝利だと言える。実際、今回の展示ブースのなかで最もGVが目立っていた。

InterBEE GrassValleyブースでのプレゼンの様子

困難なチャレンジのなかでも最近何かと話題の3Dだが実はこの技術。モニターで行う方式としては新しいが、プロジェクションで行う方法。実はその方法は古くは映写機の技術として既に存在していた。タケナカは映写機の製造設計から出張映写事業を経験して来た為、3Dには不安は無かった。我々にとって不安な点があるとしたらそれは「リア投影」という点だった。

視野角はどうか、チラツキ等は無いのかなど多くの品質面で問題があったが、海外の展示会ではリア投影の3Dは多く目にしていたが確信が持てなかったのは事実だ。しかし、同時期に導入したスチュアート製の3D用リアスクリーンを見て我々はこのプロジェクトの成功を確信した。

今回、ライブテクニカルは展示会の照明、音響、映像機材を全て担当した。
照明はステージ照明ではなく撮影用照明を使わなければならなかったし、何よりも1時間毎に行われるステージにおけるステージの転換を3DのL-Rのプロジェクターをそのままに、2Dと3Dの切り替することが求められた。よってプロジェクターの設定はシビアさが求められ、それらを司るメインのオペレーション機材はENCOREだった。

InterBEE GrassValleyブースでのプレゼンの様子

気になりバックヤードを覗いてみたが、心配する私をよそにオペレーションを担当した新人の彼女はとても楽しげにオペレーションを行っていた。それは散々ENCOREを仮組段階で検証、練習した努力の現れだろう。実に度胸があり、丁寧なオペレーションだった。これから未来のライブテクニカルスタッフとして成長が本当に楽しみだ。

InterBEE GrassValleyブースでのプレゼンの様子

彼女の成長は、我々にも多くの経験をもたらした。人材の教育や、育成という課題に向き合いながら人の素質を見抜き、開花させていく仕事というのはとてつもなくクリエイティビティな仕事である。これから育ってゆく彼女のような人材が、より高いレベルでのテクニカルディレクションを行い、多くのクリエイター、アーティストと多くのステージを創っていってくれる事を強く、切に願う。


そして、今回のプロジェクトにもう1つ語らなければならない事。それは我々ライブテクニカルはGVから最も信頼を寄せるHDDディスクレコーダーT2のデモンストレーションの依頼を受けた事だろう。T2は、2009年の年末のSTAR FESTIVALのメイン送出に採用してから多くの現場を共にしてきた我々が最も信頼を寄せるハードウエアである為、その依頼を受ける事にした。

InterBEE GrassValleyブースでのプレゼンの様子

内容は導入に至った経緯、そして数々の現場での運用経験から思った事。そして実際のデモンストレーションの構成で20分程度のステージを担当させてもらった。内容に関してはここで触れる事も無いと思うが、ここでお伝えしたい事はSP3のバージョンアップはとても素晴らしいという事。詳しくはGrassValleyのオフィシャルサイトを参照頂きたい。

多くの成長が重なり合って仕上がった現場だった。
現状にまだまだ満足する事は到底出来ないし、我々にはより多くの方へ感動を届ける為にもっと多くの体験が必要だ。もうすぐ新しい新人も入ってくる。今回取り上げた彼女も次は指導する側になるのだが、常にチーム全体で成長していけるよう心がけたい。



※SPECIAL THANKS:Grass Valley/たかアート /FUJIYA/81TOKYO