LiveTechnical Report 2010 12 THE STARFESTIVAL@なんばHatch

Report

2010.12.30 @なんばHatch THE STARFESTIVAL 2010

LiveTechnicalステージング

デジタルライティングへの挑戦
2009の年末にフルハイビジョンでVJで出演したTHE STARFESTIVALに2010年も出演することになった。2010年のSTARFESTIVALのコンセプトは「デジタルライティングへの挑戦」だった。
デジタルライティングというのは、灯体をビジュアルの側面から制御するというものだ。ムービングプロジェクターなどのハードウエアにもよく使われる言葉だが、ヨーロッパなどのステージング先進国ではより広い意味で解釈されている。ライブテクニカルでは、デジタルライティングへの挑戦を以前から考えていたのだが、なにぶん照明というのは映像と同様に専門知識が必要なもので、一朝一夕にできるものではない。そこで我々なりに「最初に取りかかれるデジタルライティングとは何か」から今回のプランニングは始まった。

FULL HD VJ+デジタルライティング
2009年にも行ったHD VJのクオリティは落としたくない。当然見に来てくれる観客はそれも楽しみにしているだろうし、主催者側からの期待度も高かった。去年の会場よりも間口が広いなんばHatchのステージをどう演出するか。主催者側からの要望は「おまかせ」だった。そして従来のアクティブなプレイスタイルをそのまま活かせるプランニングが必要。制限が無い分そのプランニングは難航した。なかなかアイデアがで出て来ないまま開催日はどんどん近づいてくる。テクニカルチーム、クリエイティブチームも焦り出したときに1つの選択肢が出て来た。「BarcoのLEDを使えないか?」この一言からプランニングは一気に進むことになる。LEDという抜群の輝度を誇るハードを映像コンテンツと連携させて照明的に光らせる。スクリーンに出る映像も照明的な演出をコンセプトに制作する。これによってデジタルライティングへの第一歩としよう。プランニングは固まった。

空間を創るということ
我々は、BarcoのLEDユニットをバラして、専用金具を製作した。小さいユニットを縦に配置してバー状設置できる金具だ。この金具を22本作りスタンドで立てステージに配置するプランを基本に、センターのメインスクリーンは220インチのHDスクリーンを配しフロントから10000lmのHDプロジェクターで投影。メインスクリーンの上下(カミシモ)にメッシュのスクリーンを吊るしリアから6000lmで投影する。そしてステージは完成した。そしてLED、メインスクリーン、メッシュスクリーン全てが連動できるオペレーションシステムを構築すること。プランは一気に固まった。

TAKENAKA LED BAR

空間と音をミックスする演出
オペレーションとクリエイティブを担当したのは、フジロックフェスティバル2010 オールナイト・フジにも出演したタケナカのクリエイティブユニットVISUALOGIC。VISUALOGICの映像演出のコンセプトは一貫しての「音の視覚化」である。世界中の名だたるアーティストと共演を果たしてきた彼らのオペレーションとクリエイティブ、そしてライブテクニカルの技術力が融合し完成したのが今回のステージである。空間と音をミックスする為には、音を映像で視覚化することが必要なのではないか?という課題を克服する為に、音に反応しHD画質で出力することができるインタラクティブなプログラムを数十パターン組み上げた。メイン映像の送出はもちろんGrassValley社のT2。メインスイッチャーはPanasonicのAV-HS400。マルチスクリーンのシーンを組むのはENCORE。言わずと知れた世界トップクラスのプロセッサーである。最高峰のアーティストが一同にあつまるTHE STARFESTIVALに相応しいステージはこうして整った。

VISUALOGICのオペレーションブース 左端がENCORE

音と映像の完全なシンクロを目指す
オペレーションは、アーティストが紡ぎ広げる音のイメージを視覚化する為にスクリーンのシーン、コンテンツの選択、スイッチングを同時に行わなければならない。我々LiveTechnicalはこのような一連のオペレーションを「プレイ」と呼んでいる。DJがプレイするのと同じ意味である。VISUALOGICのプレイは数百の現場経験から音のBPM分解とビジュアルによる再構築ルールを持っている。その反射的に動く動作に付いてくるレスポンスの良いシステム構成がプレイの肝になっている。今回のシステム構成はまさにそれを実現したものだと言えるだろう。そして、次に目指すのはより広い演出分野へのアプローチである。ライブテクニカル的デジタルライティングの追求という課題が見えた。肝心のオーディエンスの反応は上々だったように思う。YouTubeなどの動画サイトにも多くの動画がアップロードされている。多くのオーディエンスが無意識にカメラを持ち撮影してくれたものだ。今後もアーティストと共により良いステージを作り上げて行く為に、クリエイティブ、テクニカルの考察を重ねて実験的チャレンジも行って行きたいと思う。それにしても何度共演してもKEN ISHIIのDJはいい。
下記の動画はYouTubeにアップロードしてくれていたMINNOKIさんの動画を拝借している。近々収録していたロングバージョンの高画質版を公開したいと思う。


※SPECIAL THANKS:KEN ISHII/TRIANGLE OSAKA